リハビリテーションの現場における「訓練」という言葉

理学療法や、いわゆる”リハビリ”の際によく行われる対応に「訓練」があります。「筋力増強訓練」とか「関節可動域訓練」とか「歩行訓練」とか。耳にしたことがある方も多いと思います。日本理学療法士協会では、「訓練」という言葉を使わず「練習」という言葉を使うことを推奨していますが、いずれも、困惑する言葉ですね。例えば徒手筋力検査(MMT)を実施して筋力が弱い筋を特定し、その筋を鍛えるという考え方があります。しかし、MMTは筋力を評価するためのものではなく、もともとは神経学的検査のひとつとして開発され、今は筋力トルクを簡易的に検査する方法として使われています。ということは、関節トルクが発揮出来ない原因を、力学的に探っていく必要があるわけです。弱い筋を特定して鍛えても筋力は改善しません。結果的に変わることはあるかもしれませんが、それは偶然の賜物だと思います。筋はまず機能させることが必要です。MMTはパワーを検査しているわけですが、筋力が強いだけでは身体動作を制御することは困難であり、むしろ”鍛えている”つもりが関節を破壊していることもあります。

 同じようなことが関節可動域訓練にも言えます。他動的関節可動域訓練を実施することで関節障害を発症している方もいます。関節可動域は結果として広がりますが、可動域が制限されている原因を探ることが重要なのです。それが病理的に問題であるのか、機能的に問題があるのかによっても、対応は変わります。また、関節拘縮と関節可動域制限は、その定義をしっかり考えて対応する必要があります。これを混同して対応している人は、治療どころか悪化させていることがあると思います。すべてではありませんが、片手症候群もそのひとつです。肩関節周囲炎の方に、痛みを我慢させて”訓練”を実施したりすると、逆に痛めてしまいます。基本となる運動学、機能解剖学や触察技術、ハンドリングなどをしっかり学び、関節機能を改善する治療を施す必要があります。セラピストは、患者を触っている自分の手が患者の動きに影響を与えていることを自覚しなければいけません。立つ位置や持ち方、動かし方ひとつで治療結果が大きく変わることを自覚すべきです。歩行訓練も同様で、歩かせることが理学療法ではありません。しっかりとした歩行分析のもと、痛みが出る要因や歩行が安定しない要因などを探り、必要な機能を回復させる手段を考えなければいけません。トップセラピストは、当たり前のように出来ていることです。

多くの病院のリハビリテーションの現場で、こうした行為が漫然と行われている現実があります。自分の治療効果を客観的に評価し、常に内省しながら自分にいろいろな疑問を投げかけながら治療することが重要です。自分に親や家族など愛おしい方がいるように、目の前の方にも、その人を愛おしく思っている家族がいます。自分の愛おしい方に接するように、すべての方を愛おしく治療していくことが大切だと思います。

フィジカルケア宮崎のブログの更新情報をお知らせします。

前の記事

理学療法士の専門性

次の記事

スポーツ選手の強化