痛みを予防するということ

 私は以前、総合型地域スポーツクラブからの依頼で、地域の中学校に出向いてケガの予防に関するセミナーをしていました。予防なので、基本的に痛みがある生徒はいません。みんな頑張って部活動をしている生徒ばかりでした。生徒数が少ない学校でしたので、バレー部、水泳部、陸上部などまとめて教室で見させていただいたこともありました。それでも総数は10数人です。野球部など部員が多い部は単独でさせた頂きました。その当時やっていたことは、生徒同士で姿勢、可動域、筋力のチェックをさせることでした。今は「こどものロコモ」の問題などもありますが、痛みはなくても姿勢など機能的に問題のある選手がたくさんいた現状に、少しの驚きと危機感を感じたことを記憶しています。

 クリニックで患者様をみていると、当然ですが痛みを訴える選手が来院します。来院した選手に機能的な問題があるのは当然のことですが、実際にはそうした選手は一握りで、多くの選手は痛みがなくても姿勢異常や筋機能低下などの機能的問題を有しています。先日、膝をケガした選手を見ましたが、体幹や股関節周辺の筋機能がかなり低下しており、歩行動作などの荷重動作で膝関節をまったく制御できない状態でした。もちろん、ケガをした後でしたので、筋出力低下があるのは生体防御反応の観点から当然のことではあるのですが、問題だと感じたのはケガをする前から相当筋機能が低下していただろうということが予想されたことでした。その選手は、自分が筋機能が低下しているという認識はありませんでしたので、その場で徒手的に筋出力を改善させ、いかに筋機能が低下していたか、そのことが如何に問題でケガを招いたのかを認識してもらいました。その場で筋出力が向上するという、あまりの変化に本人も親御さんも非常に驚いていましたが、トレーニングによって筋機能を改善することは可能なことを伝え、ケガを予防するためにも、ふだんからしっかり基礎的な筋機能を改善するトレーニングをすべきであることを伝えました。

 スポーツ選手に限ったことではなく、企業で働いている人や元気に過ごしている高齢者、主婦の方などこのような状態の方は、巷にたくさんいらっしゃいます。痛みやケガに繋がっていないだけで、そうした方は、日常生活で無理をしなければ問題が生じることはないでしょう。しかし、長年の積み重ねや仕事による過度な負荷の連続は、将来的に関節の変形や痛みを発症する可能性があるのです。これこそ、「ロコモ予防」であり、高齢者の問題だけではないという認識を強く持つべきです。

 平成25年の社会保障制度改革国民会議では、「すべての人が働き続ける社会をどうするのか」について検討されています。「QOLを高め、社会の支え手を増やす観点から、健康の維持増進、疾病の予防に取り組むべき」という提言もされています。こうしたことは、昨年の経済産業省の「ヘルスケア産業の政策」に関する報告にも記載さてており、介護職の腰痛予防など、いわゆる「プレゼンティーズム」や「アブセンティーズム」をいかに減らすかが重要な課題となると思います。こうした課題に少しでも貢献出来るように、これからも様々な努力をしていきたいと思います。

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